従業員間のトラブルに会社が対応するべき事とは!

従業員間のトラブル

1 たとえば、社内の従業員同士が会社内でケンカをして、従業員が他の従業員をケガさせたというケースでは、会社としてどう対応するのが適切でしょうか。

2 事実関係の調査
まずは、被害者の身体の安全が最優先ですが、被害者の身体の安全が確保できたら次は、当事者、目撃者等からヒアリングを行い、事実関係の調査を行う必要があります。このとき、事の経緯を時系列にまとめてもらい客観的事実のみを記載した報告書として提出させるなどの対応を行うと効果的です。
事実調査により、ケンカに至る経緯などを明らかにし、業務に関係のある事項なのか、そうでないのかを把握することができます。

3 従業員に対する懲戒処分の検討
その後、当該従業員に就業規則に基づく懲戒処分を行うか否か検討します。
事件の規模・程度や被害者の意向等ケースによっては、懲戒処分を行わず、双方に厳重注意にとどめるという判断も考えられますし、他方で、双方ともに懲戒処分を行うという判断も考えられるかと思います。

4 会社の責任
会社は、被害者側から会社に対する責任という点も留意しなければなりません。
今回のケガが、「被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害」(民法715条1項)であれば、会社も使用者責任を負う可能性もありますし、また、会社がこうした事案が頻繁に生じていたにもかかわらず、漫然と放置しているような状況が続いていれば安全配慮義務違反に問われる可能性もあります。

5 労災申請への協力
会社の業務時間中に起きたケンカの場合には、労災が認められる可能性があります。他方で、職場で起きていても、私怨から発展したプライベートな喧嘩などは、労災は認められません。被害者となった社員から上記のような責任追及を受けないよう、業務と関係するように見える場合には、会社としては労災申請に協力することが無難であると思われます。

6 まとめ
もし、今回のようなケースが実際に起こった場合には、会社としては放置をせず、上記のような会社としてできる限りの対応を行うことが、会社に対する責任を回避できる策となりえます。
また、こうした事案が起こらないようにするために、会社として普段から従業員の人間関係や普段の様子などを観察し、従業員が問題なく働ける、良好な職場環境を提供できるように努めることが肝要となるでしょう。

弁護士 西原宗佑