下請法とは?その留意点と違反時の措置について

下請法の留意点と違反

1 下請法の概要
下請法とは、平たく言えば、「親事業者」が「下請事業者」に対し、「製造委託」・「修理委託」・「情報成果物作成委託」・「役務提供委託」という4つの種類の委託取引において、「取引上優越した地位を利用し」、「不当に不利益な行為」を押し付けることを禁止する法律になります。「親事業者」「下請事業者」の関係になるかどうかは、相互の会社の資本金によって、形式的に決まります(ただし、大企業が、資本金の小さい中小法人である子会社等を利用して、「下請事業者」に対し、下請法の禁止する行為を行わせた場合、当該子会社等が「親事業者」とみなされ下請法が適用されます。)。

2 留意点
禁止される行為は、下請法4条1項・2項の禁止する11類型の行為(受領拒否、下請代金の支払遅延、下請代金の減額、返品、不当な経済上の利益の提供要請等)です。このなかで、実務上、特に問題視されやすい傾向にあるのは、下請代金の減額です。
https://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukekankoku/
下請代金の減額とは、下請事業者の責めに帰すべき事由がないのに、親事業者が様々な名目のもと、いったん決定された代金から減額をすることをいい、たとえば、親事業者と下請事業者との間で、歩引きとして5%を下請代金の額から減ずることについてあらかじめ合意し契約書等で書面化していても、問題となるとされています。
そのように、下請法については、禁止される行為について、当事者間で私的な合意があったとしても、合意により禁止の効力がなくなるわけではないことに留意が必要です。

3 違反時における措置等
中小企業庁、公正取引委員会が、毎年、多くの企業を対象に定期的な調査を行っているほか、これら官庁に対する個別の通報が調査の端緒とされる場合もあります。悪質な違反の疑いがあると判断された事案について、事件として調査が開始されます。調査の結果、違反があったと認定されると、改善すべきである旨の「勧告」がなされますが(例:減額していた分の代金を取引先に支払うよう勧告される等)、この「勧告」は行政指導とされており、争う手段がありません。一方で、この「勧告」を無視していると、独占禁止法上の「排除措置命令」等、拘束力をもつ「処分」がなされます。
「取引上優越した地位を利用し」、「不当に不利益な行為」を押し付けられているのではないか、あるいは、押し付けているのではないか、と感じる方は、ぜひご相談ください。

4 優越的地位の濫用 
資本金、あるいは、取引行為の内容により、下請法の適用がない場合であっても、「取引上優越した地位を利用し」、「不当に不利益な行為」を押し付ける場合、独占禁止法の定める「優越的地位の濫用」として問題になり得ます。こちらについても、あてはまるのではないか、と感じる方は、ぜひご相談ください。
なお、近年、「優越的地位の濫用」には関心がもたれているようであり(下記ご参照。)、
「※ 独占禁止法Q&Aに該当する行為を行っていたか否かを調査したものであり、この公表が独占禁止法又は下請法に違反すること又はそのおそれを認定したものではない。」
などとして、違反認定に至らずとも、企業名が「公表」されることがあるので、留意が必要です。https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2022/dec/221227_kinkyuchosakekka_2.html

弁護士 内田拓志