1 休憩時間とは
休憩時間とは、職務上の義務が解除されて労働から解放されている時間をいいます。あまり注視されず、実務上しばしばおざなりになっているともいえる部分ですが、問題化することがあるので、以下、整理します。
2 一斉付与の原則等
休憩時間については、労働基準法34条1項で、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないとされており、また、同条2項では、休憩時間は、一斉に与えなければならない旨(一斉付与の原則)が定められています。
ただし、労働基準法40条1項及び同法施行規則で、「運送事業、販売・理容の事業、金融・保険・広告の事業、映画・演劇・興業の事業、郵便・電信・電話の事業、保健衛生の事業、旅館・飲食店・娯楽場の事業、官公署の事業(一部を除く)」では、その性質上、上記休憩時間にかかる規定の適用が除外されています。
逆にいえば、上記事業に当てはまらない業態で、かつ、変形労働時間制を導入していない場合は、事業所単位で一斉に休憩を与えなければならないことが法の原則であって、休憩を一斉に付与しない場合、事業所単位で、一斉付与の対象とならない労働者の範囲等について、労働者の過半数を代表する者との労使協定を締結したうえで、当該協定について、労基署に届出をする必要があります。
3 具体的に問題になる場面
(1)来客・電話等についての当番制
休憩時間に来客・電話等についての当番制を敷き、業務に従事させるときは、労働者にとっては、業務命令によってそれらの労働のために待機している時間となるため、労働時間になります(昭63・3・14基発150号)。この場合、前記の一斉休憩除外協定を締結し、届出をしておくか、(休憩時間の適用が除外されている)管理監督者に行わせることが必要となります。ただし、当番制にせず、来客・電話に係る拘束を課していない場合は、休憩時間中に偶々電話を受けた場合であったり、僅少な時間であったり、労働者本人の意思で行う場合には労働時間に該当しないとされています(長野地裁昭和53年1月26日判決、平成13年6月28日大阪高裁判決。)。(以上「新しい労使関係のための労働時間・休日・休暇の法律実務〔全訂7版〕」、中央経済社、安西愈、92~94頁)。
そのため、当番制を敷くことは、(前記一斉休憩除外労使協定の締結、届出がない場合には、)休憩時間に労働者を労働させていることになるため、使用者にとっては、避けることが必要で、あくまで任意・自発に電話に対応することは構わない旨を徹底しておくことが重要です。
(2)緊急対応
休憩時間中であっても、緊急出動命令がしばしばなされていたため、緊急出動命令がいつ出されるか分からず、それに備えて拘束されており、休憩時間も労働から解放されていなかった旨、労働者が主張した事案において、裁判所が「休憩時間中においても、労働契約に基づく義務として、出動命令に対して直ちに緊急点検業務等に就くことが義務付けられていたといえる。」として、休憩時間を労働時間と判断した裁判例があります(東京地裁令和7年7月3日判決)。
こうした事案を参考にすると、休憩時間であっても、常に上記(1)記載の来客・電話等への対応を余儀なくされていたような場合には、(当然ですが)休憩時間が労働時間と判断されることになります。
4 違反した場合
休憩時間中に労働させていたと判断された場合には、休憩時間も労働時間とされ時間外労働手当支払義務が発生しますし、悪質な場合、行政指導や、労基法所定の処分の対象となり得ます。
5 まとめ
あまり注視されないことの多い休憩時間ですが、適切に休憩時間を取得させていない場合、それ自体問題になり得ますし、係争において問題点となることが多い場合として、(主として)終業時刻以降の時間外労働手当を請求された場合において、終業時刻以降の労働だけではなく、休憩時間も労働時間であったとして、その分の時間外労働手当も論点化することがあげられます。
そのため、適切に休憩時間を取得させることは重要です。
法律事務所・官公庁(国土交通省)・商社内部の勤務で、約15年の経験があります。
訴訟やM&A等において、依頼者が望む解決について、十分な実績・経験があります。
単に「法律的にこうなる」として話を終わらせるのではなく、事実関係を丹念に把握・記憶して、事実に即した丁寧な主張や解決策の提案を行うことを心掛けています。