最近、法律相談の中で「裁判のために要する弁護士費用(報酬)も相手方に請求したいです。」という相談を受けます。これに対し、相手方に弁護士費用を請求できるか否かは事件の内容によって異なります。そこで、今回は、いくつかのケースごとに最高裁判例をもとに、弁護士費用の請求について、ご説明をしたいと思います。

1 原則論

 判例(最判令和3年1月22日)は、売買契約に基づく土地の引渡し請求、移転登記請求のケースにおいて、土地の売買契約の買主は、債務の履行を求めるための訴訟の提起・追行又は保全命令若しくは強制執行の申立てに関する事務を弁護士に委任した場合であっても、売主に対し、弁護士報酬を債務不履行に基づく損害賠償として請求することはできないと判示しました。契約上の債務の履行は、相手方に弁護士費用請求できないということを確認した判例であると考えられます。

2 例外① 不法行為のケースの場合

 他方で、例えば、交通事故や傷害事件などの契約関係のない当事者間に生じた不法行為によって被った損害賠償請求訴訟の事案においては、判例(最判昭和44年2月27日)は、弁護士費用を相手方に請求することを認めております。ただし、この場合でも全額を請求することはできず、「事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである。」と判示されており、あくまで不法行為と相当因果関係のある範囲に限られるものとなります。

 実務的には、概ね裁判で認容された額の1割程度とされるケースが多いかと思われます。

3 例外② 労働災害のケースの場合

 また、労働災害によって労働者が健康被害を被り、使用者に対して安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求に対しては、判例(最判平成24年2月24日)は、上の不法行為と同じ論理で、相当因果関係の範囲内で損害とみなし、弁護士費用の請求を認めました。この判例によって、労働災害のケースは例外的に弁護士費用の請求が認められるようになったということになります。

4 契約書での対策

 上記のような判例の集積を踏まえ、原則的には契約関係に基づく損害賠償請求における弁護士費用の請求はできないものとなっております。もっとも、上記の判例は、いずれも契約書や合意書にて弁護士費用の賠償について定めを行っておりませんでした。相手方に弁護士費用の賠償を求めるためには、例えば事前に契約書の損害賠償条項にて、弁護士費用も損害に含むことを合意することが有効かと思われます。例えば、損害賠償条項に「相手方が損害を与えた場合、一切の損害(直接損害、間接損害、弁護士費用等も含む。)を賠償する責任を負う。」などと文言を規定しておくことにより、当該契約書に基づいて弁護士費用も損害に含めて、相手方に請求することができるようになります。