
1 育児・介護休業法2025年施行の概要
(1) 2025年4月施行
2024年5月に育児・介護休業法が改正され、今年2025年4月1日と10月1日の2回に分けて段階的に施行されます。第1回目の主な施行内容は以下のとおりです。
① 子の看護休暇の見直し(第16条の2)
従来は子が「小学校就学の始期に達するまで」となっておりましたが、改正後は「小学校3年生修了まで」と対象範囲が拡大されました。また、取得事由についても、病気やけがだけでなく、感染症に伴う学級閉鎖等や入園式、卒園式等も含まれることになりました。
② 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大(第16条の8)
従来は、「3歳未満の子を養育する労働者」が対象でしたが、改正後は「小学校就学前の子を養育する労働者」に拡大されました。
③ 短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワークを追加(第23条2項)
短時間勤務制度の代替措置に、テレワークが追加されました。
④ 育児のためのテレワーク導入(第24条2項)
3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務化されました。
⑤ 育児休業取得状況の公表義務適用拡大(第22条の2)
従来は、公表義務の対象となる企業が従業員1000人超の企業に限定されていましたが、改正後は従業員300人超と対象企業を拡大しました。
⑥ 介護休暇を取得できる労働者の要件緩和(第16条の6)
従来は労使協定による継続雇用期間6カ月未満の労働者は介護休暇取得の除外を行うことができましたが、かかる除外事由が撤廃されることとなり、かかる労働者でも介護休暇の取得ができるようになりました。
⑦ 介護離職防止のための雇用環境整備(第22条2項ないし4項)
介護離職防止のために、事業主は、介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施、相談窓口の設置、自社の労働者が制度利用した事例の収集・提供、制度利用促進に関する方針の周知のいずれかの措置を講じる義務が定められました。
⑧ 介護離職防止のための個別の周知・意向確認の必要性(第21条2項)
介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、事業主は介護休業制度等に関する以下の事項の周知と介護休業 の取得・介護両立支援制度等の利用の意向の確認を、個別に行う義務が定められました。
⑨ 介護のためのテレワーク導入(第24条4項)
要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務化されました。
(2) 2025年10月施行
続いて、10月1日より施行される第2回目の主な改正内容は以下のとおりです。
⑩ 柔軟な働き方を実現するための措置等(第23条の3)
ア 育児期の柔軟な働き方を実現するための措置
事業主は、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に関して、以下5つの選択して講ずべき措置の中から、2つ以上の措置を選択して講ずる義務が定められました。
選択して講ずべき措置:⑴始業時刻等の変更、⑵ テレワーク等(10日以上/月)、 ⑶ 保育施設の設置運営等、⑷ 就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇 (養育両立支援休暇)の付与(10日以上/年)、⑸短時間勤務制度
イ 柔軟な働き方を実現するための措置の個別の周知・意向確認
3歳未満の子を養育する労働者に対して、子が3歳になるまでの適切な時期に、事業主は柔軟な働き方を実現するための措置として上記アで選択した制度(対象措置)に関する以下の事項の周知と制度利用の意向の確認を個別に行わなければならない義務が定められました。
⑪ 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮(第21条2項、3項、23条の3第5項・第6項)
ア 妊娠・出産等の申出時と子が3歳になる前の個別の意向聴取
事業主は、労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た時と、労働者の子が3歳になるまでの適切な時期に、子や各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関する以下の事項について、労働者の意向を個別に聴取しなければならない義務が定められました。
イ 聴取した労働者の意向についての配慮
事業主は、上記アにより聴取した労働者の仕事と育児の両立に関する意向について、自社の状況に応じて配慮しなければならない義務が定められました。
2 事業主としての法改正に対する対応
事業主の皆様は、自社の既存の制度と比較し、かかる法改正に対応するために、就業規則の見直し、労使協定の見直し、再締結、申請書式の見直しなどを行う必要があります。万が一、事業主が上記改正法の義務に違反した場合には、行政(厚生労働大臣)が是正勧告をすることができ、その勧告に事業主が従わなかったときは、企業名を公表される場合があります(第56条、56条の2)。こうしたリスクを避けるためにも、改正法には速やかに対応できるように、事業主が認識しておく重要性が高いと思われます。

これまで弁護士が少ない地域において、債務整理や家事案件を主として多種多様な案件を取り扱ってきました。趣味は、旅行(国内)と歴史探求です。