
1 公正証書とは
公正証書とは、私人(個人又は法人)からの嘱託によって、公務員である公証人がその権限に基づいて作成する公文書をいいます。公証役場という場所で、公証人のもと、権利関係等について記載した文書を作成するものです。例えば、AとBがお金の貸し借りでトラブルになった際、その後の返済方法等について公証人のもと公正証書で定める(ex月々10万円払います)ことによって、紛争を解決することができます。
それでは、単純に、AとBとの間のみで交わす「合意書」では足りないのでしょうか。単純な合意書と、公証人の面前で交わす公正証書では、何が違うのでしょうか。
2 公正証書の特徴
(1) 公正証書にすることによって、「これは偽造されたものだ!」等という無用な言い訳を防ぐことができます。なぜなら、公証人が作成した文書には、極めて強力な証拠力を有するからです。
また、公正証書の場合には、「強制執行認諾文言」というものを記載することができます。これは、簡単にいうと、「約束(お金の支払)を破ったときは、直ちに強制執行を受けても構いません」という意味になります。これが記載されることによって、約束事項(金銭の支払)が果たされる強い動機付けがされ、仮に約束を破ったときには、強制執行をする(不払い者の預貯金等の財産を強制的に差し押さえる)ことができます。
例えば、公正証書作成(BがAに分割弁済の内容)→Bが不払い→Aは「公正証書」に基づいて直ちに差押え手続(Bの預貯金口座から強制的に回収)可能、となります。
(2) これが、単純な合意書だった場合はどうなるでしょうか?
合意書作成(BがAに分割弁済の内容)→Bが不払い→Aは「合意書」に基づいて直ちに差押えはできない→AがBに督促又は金銭返還を求める訴訟提起、という流れになってしまいます。不払いになってしまった場合に問題の解決が長期化してしまうことになります。
3 注意点
決して、「全てのパターンにおいて公正証書を交わすべき」とは思いません。
しかし、紛争を未然に防止するという観点から、合意する内容やその後の展開、作成に至るまでの経過や当事者間の関係性等、様々な点を踏まえたうえでどのような形で書面を取り交わすべきかという点は非常に重要な視点となります。判断に迷われる場合には、当事務所にご相談ください。

長崎オフィス所長の種田と申します。「種田(たねだ)」という苗字は、長崎県では珍しいかと思います。長崎出身の妻との結婚を機に移住し、3児の父として、仕事にも家庭にも奮闘しております。
「心は熱く、頭は冷静に」を信条としています。お客様に寄り添うとともに、冷静かつ客観的な視点を意識して案件に取り組んでおります。お客様と常にコミュニケーションを絶やさず、その思いを実現できるよう、尽力して参ります。