新聞記事を社内共有する際に、著作権など注意するべき4つのコト

新聞記事の社内共有と著作権

1 新聞記事のコピーは用いたくなりますが。。。
  新聞記事を、新聞社に無断で、①コピーして社内配布したり、②社内イントラに掲載したり、③客先に配布する営業資料に掲載していないでしょう
 か。
  これらは、著作権者(=新聞社)の同意のない利用、複製として、原則、著作権法違反となるので、注意が必要です(著作権法21条、63条)。
  ※「複製」とは「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」をいい、手段を問わず、同じものを作り出すことを言い
 ます。コピー、スキャン(PDF化)、電子媒体の紙印刷などが、例としてあげられます。

2 社内共有について
  近年、「つくばエクスプレス」を運営する会社である首都圏新都市鉄道が、日本経済新聞、東京新聞(中日新聞社)の記事を、無断で画像データ化
 し、社内イントラに掲載していたことを理由に、両社から、それぞれ損害賠償請求を提起され、いずれも敗訴するという出来事がありました。(前者に
 つき、東京地裁令和4年11月30日判決、〔https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/564/091564_hanrei.pdf
 後者につき、東京地裁令和4年10月6日判決。〔https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/457/091457_hanrei.pdf〕)
  このように、新聞記事の無断複製は違法であり、実際に訴訟提起され責任を問われた事例もあります。
  ※両新聞社が、事実を把握するに至った端緒・経緯は不明であり、想像の域を出ませんが、近年、一般的に、通報行為が活発化していると言われてい
 ることからすると、社内の内部者による通報や、このようなことをしているが大丈夫か?というような問い合わせがあったのかもしれません。
  一方で、私的使用のための複製は著作権法上認められており、そのことから、限られた部数であれば、私的使用として問題ない、と考えてしまう方も
 多い傾向にあります。
  しかし、私的使用のための複製とは、個人的又は家庭内その他これに準じる限られた範囲(著作権法30条、東京地裁昭和52年7月22日判決)と
 いう狭いものであり、コピーを業務に用いた場合は私的使用のための複製にはあたらないことは、実務上確立しています。

3 営業資料への掲載について
  なお、第1、③の営業資料への新聞記事の掲載については、その態様によっては、引用(著作権法32条)として複製が認められる場合があります。
  引用を行う場合、「公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければなら
 ない」(著作権法32条)とされており、そのうえで、自己の著作物(営業資料)が「主」、掲載(複製)される著作物(新聞記事)が「従」であるこ
 とや、引用部分が明瞭に区別されていること等も一般的に必要とされており、総合的に見て、著作権法上認められる引用といえるか、事例ごとに判断さ
 れます。
  少なくとも、ただ新聞記事をコピーして客先に配布するような方法では、著作権法上認められる引用とは言えません。
  営業資料に新聞記事を掲載する際に、正しい引用となっているか迷われる場合、また引用の仕方についてわからない場合等は、ご相談ください。

4 新聞社によるサービス
  なお、どうしても、新聞記事(のコピー)を社内共有する必要がある、あるいは営業資料に用いる必要がある、という場合は、各新聞社の加盟する団
 体や各新聞社において、有料でこれを認めるサービスがあります。このサービスは有料ですが、個々に許諾を得ることなく、新聞記事のコピーを利用・
 複製できます。

弁護士 内田拓志