
カスタマーハラスメント、略してカスハラは近年報道でも大きく取り上げられるようになってきましたが、正しい定義は知っていますか?
厚生労働省によると、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上、不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就労環境が害されるもの」とされています。
結局のところ、顧客等の主張・要求が、「社会常識」に照らして相当かどうか、という今までと同じ考え方であり、特別な定義付けがされているわけではありません。
特にサービス業においては、「お客様のおっしゃることは最大限受け入れなければいけない、おかしいと思っても少しでも事業者側に非があれば反論してはならない」という風潮が慣習的に根強かったため、この考え方や慣習は見直す必要があります。
顧客の言動等がカスハラに該当するかどうかについて、暴行や脅迫、侮辱等の犯罪行為に該当する言動は判断が容易ですが、よく問題になるのは、
⓵反復継続的、執拗な要求
②拘束的な行動(不退去、居座り、店舗外での事実上の拘束など)
③代替商品、金銭賠償の要求
④謝罪の要求
ではないでしょうか。
⓵、②は、事業者に確かに非が認められ、顧客等の主張にも一定の合理性はあるものの、事業者による適切な謝罪と対処をし、事業者の説明責任又は一定の法的責任(修理交換、弁償等)を果たしても、顧客が納得することがなく、終わりが見えないケースが代表的です。事業者に非があることから顧客に強く出づらい点がありますが、一定の合理的な対応をした後は、きっぱりと顧客からの要求や連絡は拒否する姿勢が大切です。⓵、②の最終目的として、③があることが多いですが、これもクレームの内容や事業者の重過失ないし過失の程度等により判断し、不当要求の場合はきっぱりと拒否することが大切です。
④においては、繰り返しの謝罪や書面の交付を求める場合もありますが、書面による交付は法的義務ではありません。土下座を求めることなど社会通念上許されませんので、拒否します。
もっとも、顧客等からのクレーム等は、初期対応として、事実確認が重要ですから、この調査をせずに、事業者の対応方針を決定することがないように、慎重な対応を心がけましょう。
また、これらの顧客からのクレーム等について、その対応を従業員まかせにしてはいけません。従業員が店舗や現場で単独で対応を強いられるような体制については、事業者として安全配慮義務違反等を問われる可能性があります。
よって、カスハラ対応については、社内で一定のルールを確立し、相談窓口ないし相談担当者を周知しておくことが大切です。

私は、長崎では数少ない長崎出身の女性弁護士です。
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