
今回は、相続対策として遺言を作成したり、贈与をしたりする場合に併せて検討すべき内容として、「遺留分対策」についてお話いたします。
特に、オーナー経営者の方々にとっては、遺留分の問題が経営に大きな影響を与える可能性があります。そのため、遺留分対策を早めにしっかりと行うことが重要になります。
1 遺留分とは?
遺留分とは、被相続人が遺言や贈与などによって財産を処分した場合に、被相続人の財産に関して、兄弟姉妹以外の相続人が金銭債権として最低限確保できる利益のことです。
そのため、被相続人が遺言や贈与などで財産を自由に処分したとしても、遺留分を侵害された遺留分権利者が遺留分の主張をしてきた場合、後継者など被相続人の財産の多くを取得した人が対応しなければならないことになります。
2 遺留分対策の重要性
オーナー経営者の方々は、自身の事業用資産(自社株や自社ビル)を後継者に集中し、事業承継をスムーズに行いたいと考えていることが多いと思います。しかし、相続時に遺留分を巡る争いが生じると、自社株の評価額が高い場合など、対応するために後継者が多額の資金調達を余儀なくされることもあり、経営に支障をきたすおそれがあります。
これらのリスクに対応するためにも、遺留分対策を講じることは重要です。
3 具体的な対策
遺留分対策には色々なものがあり、具体的な案件に応じて検討すべきものですが、以下では、そのうちのいくつかをご紹介いたします。
1.贈与時、遺言書作成時の注意点
贈与や遺言を行う場合、事業に必要な資産は後継者に遺しながら、他の財産を後継者以外の相続人に遺すことで、遺留分侵害が生じないような形を取り、遺留分の主張自体がなされないような対策を採ることが考えられます。
2.早期の贈与
遺留分を計算する場合の基礎財産の価額に算入される贈与は、相続人に対する贈与については相続開始前の10年間にしたものに限られます。そのため、事業用資産については後継者に対して早めに生前贈与を行い、相続開始時点で贈与から10年が経過していれば、遺留分を算定する基礎財産に算入されないことになることから、遺留分対策の一つとして検討できます。
3.生命保険の活用
被相続人の財産の多くを取得する後継者が遺留分権利者に対して支払う金銭の原資の準備として、後継者を受取人とする生命保険契約を活用することも考えられます。生命保険金は相続手続とは別途保険会社から受取人に直接支払われる点もメリットと考えられます。
4 いつ対策を始めるか?
事業の引継ぎは、法律面だけではなく税務面や社内調整、取引先など対外的な関係での調整など様々な事情を総合的に考慮しながら進める必要があり、相当の時間がかかるものです。そのため、できるだけ早期に遺留分対策を始めることで、余裕をもった事業承継プランを立てることも可能となり、後日のトラブルを未然に防ぐ可能性も高まります。
5 まとめ
オーナー経営者として、事業のスムーズな引継ぎを行いつつ、相続人間の関係もトラブルなく財産の承継を行いたいというご要望は強いものと思います。
当事務所では、これまでに事業承継に関する遺留分対策に多数関与してきておりますので、遺留分対策など今後の事業承継につき疑問点、ご不安などありましたら、ご遠慮なくご相談ください。皆様が円滑に相続対策を行えるよう全力でサポートいたします。

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