契約書における管轄裁判所等の実務について


1 管轄裁判所とは
管轄裁判所とは、平たく言えば、紛争となって当事者同士で解決できず、訴訟手続きに移行する場合、当該訴訟事件を取り扱う裁判所のことです。
通常は、民事訴訟法の定めに従い、管轄裁判所は決定されますが、契約書には、「甲及び乙は、本契約及び個別契約に関する一切の裁判上の紛争については、●●地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする」旨の規定、すなわち、訴訟は特定の裁判所で行うことに合意する旨の規定が盛り込まれていることが多いです。

2 留意点
前記1のような規定が契約書に盛り込まれていることが多いため、契約書をよく読まずにサインしてしまうと、知らないうちに、(契約書作成側・相手方にとって有利となる)遠隔地の裁判所で裁判を行うことに合意してしまっている場合があります。
近年は、裁判手続きは、ウェブで行われることが増えましたが、それでも、証人尋問など、直接裁判所に出廷することが必要とされる場面があります。
そのような場合、遠隔地への移動という物理的負担に加え、いわゆる「アウェイ」の土地で行われる裁判手続きに参加するという、心理的負担も発生してしまいます。

3 英文契約・海外契約
上記のように、国内の「遠隔地」ということだけで済めばまだよいのですが、海外企業や日本企業の海外法人等との英文契約・海外契約となると、全く知らない国(や州)の全く知らない裁判所で、全く知らない法律のもとで行われる、裁判手続きに参加させられることを余儀なくされてしまうことがあります。仮にその国の裁判所でよい結果(判決)を得られたとしても、その裁判の結果を日本で実現すること(執行といいます。)が不可能な国もあります(たとえば、本日現在、中国の裁判所の判決も日本では執行することができません。)。詳細は省きますが、ニューヨーク条約に加盟している国同士では、「仲裁機関」で行われる「仲裁」については、その結果(仲裁判断)について、加盟国で執行することが可能と相互合意されていることから、海外契約では、紛争解決機関は仲裁機関の仲裁と定めておくことが多いです。)。また、海外契約では、準拠法(すなわち、そもそも、どの国(州)のどのような法律に基づいて判断がなされるか)という問題もあります。

4 その他 
上記では、紛争解決機関の問題ばかり述べましたが、その他にも、契約書では、案を作成した相手方を仮に「A」、自社を「B」とおくと、(簡単な例でいえば)「Aは故意または重過失の場合のみ責任を負う」「Aと第三者との紛争は、Bの費用と責任で全て解決し、BはAに迷惑をかけない」「Aは、損害が合計で●円以上の場合のみ賠償する責任を負い、●円未満の場合は賠償する責任を負わない」「Aは、直接かつ現実の損害のみ賠償する責任を負う」(=逸失利益等は賠償しない)といったような、自社に著しく不利となる条件が課されていることも多くあります。こうした事態を防ぐために、不安な契約については、ご相談ください。