1 中小受託取引適正化法(以下「取適法」といいます。)が、令和8年1月1日から施行されています。
適用対象が拡大され、対象取引や禁止行為も追加され、中小企業にとっても影響が大きいことから本ブログで取り上げます。
なお、本稿は主として委託事業側での立場での原稿となります。
2 適用対象取引
適用対象取引の該当性は、取引の内容と資本金または従業員基準で判断されます。
以下が、適用される場合です。従業員基準が新たに加わっています。
1.製造委託・修理委託・特定運送委託・情報成果物作成委託・役務提供委託
委託事業者側 →中小受託事業者側
資本金3億円超 →資本金3億円以下(個人を含む)
資本金1000万円超3億円以下 →資本金1000万円以下(個人を含む)
従業員300人超 →従業員300人以下
2.情報成果物作成委託・役務提供委託
委託事業者側 →中小受託事業者側
資本金5000万円超 →資本金5000万円以下(個人を含む)
資本金1000万円超5000万円以下 →資本金1000万円以下(個人を含む)
従業員100人超 →従業員100人以下
(注:情報成果物作成委託・役務提供委託は、プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管及び情報処理に限られます)。
3 主な留意点
(1) 発注時
発注は、書面または電磁的方法(電子メール、SNS等)で行う必要があります。口頭(対面・電話)での発注はNGです。
また、発注の際には、最低限、委託内容、代金額、支払期日、支払方法は明示する必要があります。
(2) 支払期日
支払期日は、物品等の受領日から60日以内にする必要があります。
例えば、末締めの翌々末日払いなどは不可です。
(3) 一方的な委託内容の変更の禁止
受託者に責任が無いにも関わらず一方的な委托内容の変更をすることはできません。そのような変更の必要がある場合には、受託者の明確な同意を得るか、追加代金の支払等を検討してください。
(4) 委託代金の減額の禁止
発注した代金を発注後に減額する行為は禁止されます。協賛金の徴収、原材料価格の下落など名目や方法、金額にかかわらずあらゆる減額行為が禁止されます。振込手数料を受託事業者に負担させて、代金から差し引いて支払う行為も禁止されます。
(5) 買いたたきの禁止
発注する物品・役務等に通常支払われる対価(同種又は類似品等の市価)に比べて著しく低い代金を不当に設定する行為は禁止されます。
(6)協議に応じない一方的な代金決定の禁止(法改正で追加)
中小受託事業者から価格協議(値上げ)の求めがあったにも関わらず、協議に応じなかったり、必要な説明を行わずに一方的に代金を決定する行為は禁止されます。受託事業者から料金の値上げや条件変更の要請がされた場合は、先ずは、書面で要求内容とその理由を受託者から提出してもらい、その上で、どのような対応をとるかについて真摯に検討する必要があります。
4 取適法違反の場合の影響
取適法に違反した場合や、中小受託事業者から当社に取適法違反があると申告された場合には、取適法に基づき監督官庁から下記の対応がなされるおそれがあります。状況によっては、違反した法人や個人に重大な損害が生じる可能性があるので十分に留意してください。
(1) 法人に対する調査・検査
(2) 取適法違反があった場合、違法行為の取り止め、原状回復、再発防止措置の実施等の勧告がされます。勧告が行われた場合は、原則公表されます。その場合、法人のコンプライアンス体制につき重大な問題があることが広く周知されるので、法人のレピュテーションリスクは極めて大きいです。
(3) 違反者である個人及び法人に対し、最高50万円の罰金が科される場合があります。
5 最後に
現在のわが国の企業経営においては、取適法違反に限らず違法行為を行った場合に会社の受ける影響は非常に大きいものがあります。
本件のように、法改正の都度、自社において違法行為・コンプライアンス違反がないかのチェックを行っていくことが重要です。
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