1 はじめに

 育児介護休業法(正式名称:「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」)は、仕事と子育て又は家族の介護の両立を図るために、主に、育児休業、子の看護休暇、介護休業、介護休暇といった制度について定めた法律です。

 この法律は、割と頻繁に改正が行われており、事業主としては、法改正に応じた適切な対応が求められますので、法改正の内容についても把握しておく必要があります。

 今回は、今年(令和7年)10月1日から施行される法改正(柔軟な働き方を実現するための措置を講ずること、柔軟な働き方を実現するための措置の個別の周知・意向確認を行うこと、仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が義務付けられることになります。)について、ご説明させていただきます。

2 柔軟な働き方を実現するための措置について

(1)事業主は、3歳から小学校就学前の子を育てる労働者に関し、柔軟な働き方を実現するための措置を講ずることが義務付けられます。
 具体的には、以下の5つの措置の中から、2つ以上の措置を選択して講ずることが義務付けられます。
   1.始業時刻等の変更
   2.テレワーク等
   3.保育施設の設置運営等
   4.養育両立支援休暇の付与
   5.短時間勤務制度
 これらの措置のうち、①~④は、所定労働時間を短縮しないフルタイム勤務を前提とした措置であり、⑤は、労働時間を短縮する措置になります。

 労働者は、事業主が提示した2つ以上の措置のうち、1つを選択して利用することができることになります。

 なお、事業主が講ずる措置を選択する際は、労働者の過半数組合(過半数代表者)からの意見聴取の機会を設ける必要があります。

(2)①始業時刻等の変更について
 この措置は、1日の所定労働時間を変更しない前提で、以下のいずれかの制度を導入するものです。

  ・フレックスタイム制

  ・時差出勤制(始業・終業の時刻を繰り上げ・繰り下げる制度)

 なお、時差出勤制については、繰り上げ・繰り下げる時間について、法律上の定めはありませんが、極端に短い時間で設定してしまうと、①の措置を実質的に講じていないと評価されるリスクがありますので、そのような設定は避けた方が無難でしょう。

(3)②テレワーク等について
 この措置は、1日の所定労働時間を変更しない前提で、1週間の所定労働日数が5日の労働者に対しては、月に10日以上、1週間の所定労働日数が5日以外の労働者に対しては、1週間の所定労働日数が5日の場合を基準として所定労働日数に応じた日数(例えば、1週間の所定労働日数が2日の労働者であれば、月に4日以上(10日×2/5=4日))、テレワーク(在宅勤務)を認めるものです。
 なお、この措置は、原則として時間単位で取得可能とする必要があります。

(4)③保育施設の設置運営等について
 この措置は、保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与(例えば、ベビーシッターを手配し、その費用を企業が負担する等)をするものですが、多くの事業主にとっては、この措置の導入はハードルが高いものと思われます。

(5)④養育両立支援休暇の付与について
 この措置は、法律上認められている休暇とは別に、就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)を、年に10日以上付与するものです。
 この休暇を取得した日の給与については、各事業主の定め方によりますが、ノーワークノーペイの原則に従い、無給としても差し支えありません。
 また、この措置についても、原則として時間単位で取得可能とする必要があります。

(6)⑤短時間勤務制度について
 この措置は、労働者の所定労働時間を短縮するもので、原則として、1日の所定労働時間を6時間とする措置を設けることとされています。

3 柔軟な働き方を実現するための措置の個別の周知・意向確認について
 事業主は、3歳未満の子を育てている労働者に対して、労働者の子が3歳に達する1ヶ月前までの期間(正確には、労働者の子が1歳11ヶ月に達する日の翌々日から2歳11ヶ月に達する日の翌日までの1年の間)に、事業者が選択したの2つ以上の措置について、周知と制度利用の意向の確認を、個別に行うことが義務付けられます。

 周知事項としては、以下のとおりです。

 ・事業主が選択した2つ以上の措置の内容

 ・当該措置の申出先

 ・所定外労働(残業免除)、時間外労働、深夜業の制限に関する制度


 また、個別周知・以降確認の方法としては、面談(オンライン面談も可)、書面交付が原則で、労働者が希望した場合は、FAX、電子メールで行うことが可能とされています。

4 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮について
 事業主は、妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、労働者が本人又は配偶者の妊娠・出産等を申し出た時と、労働者の子が3歳に達する1ヶ月前までの期間(正確には、労働者の子が1歳11ヶ月に達する日の翌々日から2歳11ヶ月に達する日の翌日までの1年の間)に、育児と仕事の両立についての意向を聴取・配慮することが義務付けられることとになります。

 聴取内容としては、以下のとおりです。

  ・勤務時間帯(始業および終業の時刻)

  ・勤務地(就業の場所)

  ・両立支援制度等の利用期間

  ・仕事と育児の両立に資する就業の条件(業務量、労働条件の見直し等)

 また、意向聴取の方法としては、面談(オンライン面談も可)、書面交付が原則で、労働者が希望した場合は、FAX、電子メールで行うことが可能とされています。