1 不当な取引制限(価格カルテル・談合等)について
 (1)不当な取引制限について
 不当な取引制限とは、いわゆるカルテル・談合等であり、独占禁止法2条6項において。「この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。」と定められています。
 分かりやすく言うと、同業者・競争事業者同士で、価格競争に反する行動(価格カルテル・談合等)が該当し、事件化するのは、圧倒的に価格カルテル・談合が多いです。

 (2) 近時の摘発事例について
・令和7年5月8日、公正取引委員会は、ホテルの運営事業者15社に対し、各ホテルは、相互に、毎月の客室稼働率、客室平均単価、販売可能な客室1室当たりの収益、将来の予約状況、将来の客室単価の設定方針等の情報を交換していたとして、警告を行いました。

・令和7年5月14日、公正取引委員会は、ごま油及び食品ごまの製造販売業者2社に対し、令和5年1月以降、2社の営業担当者が面談及び電話連絡の方法により複数食品会社等に対する渡し価格の引上げに関する情報交換を行うことにより、渡し価格を共同して引き上げることを合意したとして、2社に排除措置命令(当該違法措置を取りやめる命令等)及び課徴金納付命令を行いました。

 前者のホテルの事例が警告にとどまったのは、価格の引上げに関する情報交換・合意の存在までは認定されていないことが理由であると推量されます。一方、後者のごま油及び食品ごまの事例で、排除措置命令・課徴金納付命令が出されたのは、価格の引上げに関する情報交換を行うことにより、渡し価格を共同して引き上げることを合意したと認定されたことが理由と推量されます。

 (3) 違反し、事件化した際の具体的なリスク・負担等について

〇長期間の調査対応に追われます

 1年~2年といった調査対応に応じる必要があります。

〇中小企業者でも巻き込まれるおそれがあります

 どの地域・どの業界・どの発注者等を調査対象とするかは公取委の認定次第です。

 また、大企業が行う全国規模のカルテル・談合に、地方の中小企業者も(表現はともかく)巻き込まれ、処分を受ける例が多数あります。 

〇莫大な課徴金が課されます

 最大で過去10年の売上げの10%の課徴金納付を命じられます。

2 まとめ
 不当な取引制限(価格カルテル・談合等)の概要は以上であり、上記のようなリスクがあります。
 とはいえ、同業者間での会合等は多数あり、同業者と接することは多いと思いますので、このような情報交換は大丈夫か、具体的な基準等についてわからない場合等は、ご相談ください